大判例

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東京高等裁判所 昭和41年(う)2978号 判決

被告人 宮田成康

〔抄 録〕

所論は、医師法第一七条の医業とは反覆継続の意思をもつて医療行為をなすことをいうところ、被告人の本件医療行為は個個の動機により誘発された偶発的な行為があるに止まり本件にあらわれた全証拠によつても右の反覆継続の意思は認められないしまた原判決の理由とするところによつては右の意思を認めるに足りないとして、原判決の事実誤認、理由不備ないし齟齬を主張するのである。

よつて本件記録を精査して案ずるのに、被告人が医師でないのに医業をなしたとの原判決事実は、原判決の挙示する証拠を総合すれば優に証明するに足り、原判決には所論のような事実の誤認、理由不備ないし齟齬の違法は認められない。医師法第一七条にいわゆる医業とは反覆継続の意思をもつて医療行為をなすことをいうものと解すべきことは所論のとおりであるが記録により認められる、被告人は昭和三一年一一月二八日、昭和三四年三月二七日、昭和三六年四月二七日の三回にわたり、いずれも本件同様医師法違反の罪により懲役刑に処せられた前歴がありながら、更に本件において患者三名に対し四回にわたつて注射、投薬等の原判示医療行為を反覆したものであること、本件各行為当時自宅に白衣、聴診器、注射器、薬品等多量の医療器具薬品等を所持し、いつでもこれを利用し得る状態に置き本件においても適宜これを使用したものであること、各患者に医療行為をなすに当つても患者本人からあるいは被告人の妻フサ子を介して依頼を受けるや何ら躊躇することなくむしろ待ち構えていたように直ちにこれに応じて積極的に診察し、注射、投薬をするなどし、その際の服装、患者との応待、言動はいかにも医師であるかのように振舞つていたこと、等の客観的な諸事情に加えて、被告人は司法警察員および検察官の取調に際しても各医療行為に当り反覆継続の意思がなかつた旨の供述はせず、むしろ明示的に述べてはいないがこれを認める趣旨に解される供述をなし、また原審第一回公判期日においては被告事件に対する陳述として「公訴事実はそのとおり間違いありません」と述べている(この陳述が証拠となり得ることは後述のとおり)ことも併せ勘案すれば、被告人が本件において反覆継続の意思をもつて各医療行為をなしたものと認めるに十分であつて、所論のように個々の動機により誘発された偶発的な行為であるとは到底認めることができない。

(石井 目黒 渡辺達)

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